先日Audiojack(僕も大好きな素晴らしいベテランTechhouse Duoです)が、以下のような投稿をしていました。
日本語訳は以下の通り(DeepLを使用、一部校正しました)
ビートポートCEOロブ・マクダニエルズへの嘆願書を公開します。
私たちは、ビートポートの生命線である全てのアーティストの利益のために、今すぐ行動して欲しいという願いを込めて、この手紙を書きました。
この危機的状況の中で、ツアー収入のないトラックメーカーは生き残りをかけて奮闘しています。
ビートポートは、DJやエレクトロニックミュージックの最も有名なショップであり、皆様からの収入は、私たちの生活に欠かせないものです。
最近、私たちの音楽の価格を99ペンスから1トラックあたり1.49ポンドに値上げして欲しいとエージェントに申し出たのですが、Beatportで他のトラックがその金額で販売されているのを見たことがあるのですが、その価格は「Beatport Exclusive」のリリースのためだけのものだと言われました。
また、自分たちのレコードがBeatportでの実際の販売価格は、アーティストやレコード会社に決定権はないと言われました。
DJが最も安く音楽を購入できる場所になりたいと考えているのは理解していますし、競合他社との競争に打ち勝つことで市場シェアを高めたいと考えているのは理解していますが、結果的には音楽を作っているアーティストに不利益を与えていることになります。
具体的な内容に深く踏み込むことなく、1トラックあたり99ペンスで音楽を販売することが2020年にはどのように機能しないかをお見せしたいと思います。
この数字は大まかなもので、あなたは私たちのエージェントとNDAを結んでいることを知っていますが、そのエージェントでさえもあなたとの契約内容を教えてくれません。
販売価格:99ペンス
ビートポート: 50ペンス
販売店:10ペンス
ラベル:19p
アーティスト:20p
オーディオジャックとして、私たちは15年前からBeatportでリリースしてきましたが、注目を集めるために必要な数字をよく理解しています。最近では、Beatportで成功したトラックは2000枚売れるかもしれません。
この例では、2000枚の売上×20ポンドは、アーティストが400ポンドを受け取る可能性があることを意味しています。
これは最高のケースのシナリオであり、レアなヒットレコードです。仮にこれらのヒット曲を継続的に作ることができたとしても、私たちの基本的なニーズを満たすことはできないでしょう。
生活する余裕がないのに、どうやって音楽を作って生活していけばいいのでしょうか?
エレクトロニック・ミュージックはニッチな市場性質で、音楽を買うのは他のDJやシーンの熱狂的なフォロワーがほとんどです。
DJの立場からすると、自分たちがプレイする音楽に高い値段を払っても問題はないし、アーティストがやり続けられるようにサポートしてくれるのは嬉しいことだと思うよ。DJというのは、安物の音楽を大量に持っていることではなく、質の高い音楽の個人的なコレクションを磨いて共有することなんだ。
一つだけお願いがあります。アーティストやレコード会社が自分たちの音楽の価格をBeatport上で設定できるようにしてください。
それが何であれ、それはクリエイターの選択であるべきです。シーンとサウンドトラックを提供するアーティストのために、そして最終的にはあなたの収益源のためにも、今すぐ行動してください。
最後までお読みいただきありがとうございました。
リチャード&ジェームス / オーディオジャック
ミュージシャンもふつうの仕事も厳しい
「音楽でメシを食うなんて夢のまた夢」というのは、夢を持つ音楽の卵に当たり前のように投げかけられてきた「呪いの言葉」です。
この言葉の背景には「諦めてふつうの(コンサバティブな)仕事をしろ」というメッセージがあります。
しかし今の時代を見てみたらどうでしょうか。
ふつうの仕事すらふつうに維持していくのは厳しい、というのも珍しくなくなってしまいました。
食いっぱぐれないミュージシャンが必要とされるもの
私はふだんはビジネス戦略の専門家でもあるのですが、以下の3つが必要とされるのではないでしょうか。
- 自分のチャネルを持つ
- 他のビジネスを持つ
- 高いインフルエンス力を持つ
今回はこのへんを提案してみたいと思います。
自分のチャネルを持つ
Beatportは、ダンスミュージックのECポータルサイトです。
「ダンスミュージック」「デジタルダウンロード」という特性こそあれど、言ってみれば楽天やAmazonといったプラットフォームに出品するのと同じで、集客やシステムメンテナンスを代行してもらっていることになります。
代行してもらっている機能は当然プラットフォーム側に対価を支払うことになり、取り分が少なくなることも当たり前でしょう。
しかし世の多くのDJがBeatportでお金を出してダウンロードしているのも事実で、Beatportから撤退もできないのが現実でしょう。
そこで、Beatportは新規ファン獲得の手段と割り切り、ディープなファンを掘り起こして自分のチャネルに引き込むということです。
一例ですが、
- Beatportで自分のトラックを購入したユーザーをオウンドサイトに誘導
- 購入したレシートをメールフォームからアップロードしたら、未発表トラックをプレゼント
- リストが取れるのでスパチャ付きのオンラインライブやマーチを紹介していく
といった形で、Beatportに左右されずにマネタイズを実現できるわけです。
他のビジネスを持つ
とはいえ、Audiojackの「エレクトロニック・ミュージックはニッチ」という言葉どおり、ユーザー母数が多いとは言えない市場ので「自分のチャネルを持つ」と言っても機能しない可能性もあるでしょう。
そうなると、他のビジネスを持つのがやはり安パイです。
何をやるのかは人それぞれ強みがあるので、それを活かせばいいわけですが、
- トラックメイキング・DJをオンラインで教える
- トラックメイキング・DJのeラーニングコンテンツを販売する
- ゴーストライター
- 物販(Merch)
あたりが現在のスキルの延長線上でできそうなものになるでしょう。
高いインフルエンス力を持つ
世界には大量のDJがいて、その中にプロフェッショナルなDJがいますが、さらにその中のごく一部に景気や流行に全く左右されない人がいます。
そういった人たちは、ダンスミュージックシーンのジャンルはおろか、ミュージシャンの枠を飛び越え、ビジネスマン、インフルエンサー、セレブであり彼ら自身がメディアやビジネスとなっているのです。
好き嫌いあると思いますが、Armin Van Buuren、Tiesto、David Guettaあたり(もしかしたらCarl Coxも)が該当します。
これはオランダ国王の即位式で、Arminがプレイしたときのもの。
オランダ国王がArminのファンだから実現したとのことですが、オランダ国王にも影響を与えるぐらいのことが起こるような種まきがなされていたということに他なりません。
この領域に辿り着くには、やはり「ダンスミュージック村以外の住人から高い評価を得る」ということが大事になるので、
- ニッチと対極なトラックをヒットさせる
- TVで取り上げられる
- 権威的存在からお墨付きをもらう
- ネットでバズる
あたりがやるべきことでしょうか。
そんなことよりふつうにイベント開催ができるようにはなるのはいつごろ?
というわけで私の提案はこんな感じですが、本当はこんなことはどうでも良くて、皆が望んでいるのは「一刻も早くふつうにイベント開催ができるようになること」です。
この記事を書いている2020年9月現在、日本でCovid-19は落ち着いてきた感があります。
一方フランスは50万人、スペインは70万人の感染者が出ており、イギリスはロックダウンを検討するなど第二波が来ている状態です。
ただ、入院患者数はかなり少なくなっており、春には一日1000人超の死者が出ていたことを考えると、全く危機的とは言えない状態です。
むしろ経済を回すということで、積極的にイベント開催を行ったほうが良いと言えます。
しかしながら、
- 行政が規制を緩和する
- 航空会社が規制を緩和する
- 主催者が規制を緩和する
これらの条件が揃わないと「ダンスミュージックシーンの正常化」は厳しいでしょう。
「ワクチンができたら」という説もありますが、効果やそれによってもたらされる影響などいろいろと未知数で、「果報は寝て待て」が結論でしょう。
僕は今後も時折スパチャなどで応援をしてきたいと思います。
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